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INTERVIEW

Japanese

笹木勇一郎

2015年07月号掲載

笹木勇一郎

Interviewer:吉羽 さおり

2014年6月、シングル『星のかけら』でメジャー・デビューをした笹木ヘンドリクス。ソロではありつつも、パワフルで骨太なバンド編成によるロック・サウンドでグッド・メロディを聴かせていた彼だが、昨年秋、本名の笹木勇一郎へと改名することを発表した。そこから約10ヶ月、笹木勇一郎としての第1弾として1stアルバム『東京シティらんでぶー』を完成、名実ともにソロとしてリスタートを切る。これまでに発表した曲も収録しつつ、新たな曲ではポップ性も開花した軽やかなアルバムとなったが、ここへと至る彼自身の決意も聴こえてくる。このアルバムの背景を訊いた。

-待望の1stアルバムが『東京シティらんでぶー』が完成しましたが、2014年に笹木ヘンドリクスという名でデビューをしてから、笹木勇一郎へと改名したり、この1年で変化もありましたので、そのあたりからお訊きしていこうと思います。改名が、去年の9月でしたね? それはどういうことがきっかけだったんですか。

もともとインディーズのときは、笹木ヘンドリクスがバンドとしての名前だったんですけど、ソロでメジャー・デビューをするにあたって、ひとりだけど名前だけは残すかっていうことで笹木ヘンドリクスでやっていたんです。それが、バンドのメンバーや僕、あとはレコード会社のスタッフさんとか、みんなの間で少しずつズレていた方向性みたいなものが、徐々に大きくなってきていて。わかりづらいままぎくしゃくするよりは、本名に戻して、いよいよソロですって、すっきりさせた方がいいなという状況になったんです。それで、変えたという感じだったんですね。なので、バック・バンドのメンバーも前は全員男子だったんですけど、今回はドラムとベースが女性で。サイド・ギターも今の編成ではなしで、僕がギター・ヴォーカルで、あとはキーボードがいる形ですね。

-そのサウンドも大きく変わりましたね。以前は男臭くて、馬力のあるロック・バンド然とした形でしたもんね。

本筋は変わってないんですけどね。笹木ヘンドリクスという、"ヘンドリクス"を使っていた分、どこかしらしっかりギター・ロックじゃないといけないんじゃないか、とか。縛りではないんですけど、名前によってイメージされる音楽性もあったと思うので。笹木勇一郎にしたからには、そのへんはもっと柔軟にできるかなというのもあって。アルバムの新しい曲は、ヘンドリクスの名前がついていたらもしかしたらできなかったかもな、という曲も入れています。

-そうですね。自分自身でも心理的にすっきりしたことはあったんですか。

変えてから3ヶ月くらいはなかなかそうもいかなかったですね。そこまで2年くらい、ヘンドリクスとしてやっていて。バンド・メンバーとも長くやっていたし人間的にも好きだったので、みんなと音を鳴らすということも楽しかったんです。だけど、いよいよ笹木勇一郎ひとりになって、どういう音楽を作っていこうかというので、若干、停滞したというか。整理する時間が、思いの他かかった感じがするんです。でもまあ、うまく新曲がぽつぽつできてきて。いろんな曲があるし、名前変えての第1弾はアルバムっていう形で出すのがいいんじゃないかっていう話になったんです。そこでようやく進んだというか。

-不安な日々もあったんですね。

そうですね。ヘンドリクスとして2枚目のシングルもそのときはデモとして作っていたんです。それも一旦、ストップになったのもあったので。

-この先、どうなるだろうというのもあったと思うし。ファンにとっても、デビュー曲の「星のかけら」を聴いて、次はどんな曲が出るんだろうって待ってもいたと思うので、そこは歯がゆいところですね。

はい。自分たちの中ではずっと進んでいた話ですけど、ヘンドリクスで観ていた人にとっては、改名の発表自体は唐突な感じだったので。とはいっても、その理由をファンの人たちに"ズレが生じたので"とか細かい話をするのも違うかなっていうのもあるし(笑)。

-たしかに(笑)。

だから、びっくりした人も結構いるのかなと思うんです。あとは、1番最初の18、19歳くらいのときに、デビューしかけたけどしなかったときもソロ、ひとりでしたし。地元の北海道に戻ってバンドをやりたいと思ってバンドを組んで。そのあとイギリスに冒険しに行って、そしてヘンドリクスをやって。またこうして、結局ひとりになったんですけど。その整理している3ヶ月の間に、"何でまたひとりなんだよ"っていう寂しいなあっていう気持ちはあったんです。でもまあ、そういう巡りあわせというかね。ひとりって形だけど、いろいろ新しく会えるミュージシャンの人もいるだろうし、新しくでき得る音楽もあるだろうしなと思って。今回は、セルフ・プロデュースみたいな感じで、アレンジや録音をキーボードの、はたっぷ君(幡宮航太)、あとはミキサーさんと一緒にやったんです。

-気心が知れたメンバーだけでやったんですね?

そうですね。タイトに作れたというか。メンバーが少ない分シンプルにも作れたというか。そういう発見があったのはよかったですね。

-ヘンドリクス時代の曲も入ってますが、いろんなタイプの曲が増えましたね。きっとTrack.2「レモンソーダの雨」のような歌詞の曲ってこれまでは歌わなかっただろうし、試みがありますね。

「レモンソーダの雨」は、いしわたり淳治さんと歌詞プロデュースみたいな感じで共作させてもらったんですけど。ヘンドリクスでももちろん書かなかったし、これまでの曲ならTrack.8「ヒラメキの瞬間」みたいな曲がギリギリ近いかなっていう感じはしますけど。物語に、コンセプトと主人公をしっかり設定した曲は、今まで自分がこっぱずかしくて作らなかった部分だったんです。でも、"いいじゃん、いいじゃん"みたいな感じで、いしわたりさんが引き出してくれた感じなんです。

-"レモンソーダ"とか、ここまで突き抜けたワード使っちゃうことでも振り切ってますしね。

デモ音源にまだ歌詞がのってないとき、夏に似合いそうだねって話が出ていて。いしわたりさんに、とにかく夏で、ラヴ・ソングっていうテーマだとしたらどういうふうに言葉を使えば、絶対に夏っぽくなるか、甘酸っぱいラブ・ソングになるかの手法であるとか、いつも自分が歌詞を書くときとは違う視点を広げてもらいましたた。新しい引き出しを増やしてくれた感じでした。