Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

ゲスの極み乙女。

2014年10月号掲載

ゲスの極み乙女。

Member:川谷 絵音 (Vo/Gt)

Interviewer:沖 さやこ

-心情を歌えるようになったのは、大きな変化だと思います。

もともとやりたかったことではあるんですけどね。でも、ゲスでそういうことをやっていっていいのかな?とか、自分でやっているのに自分にそういう枷をつけちゃって。でもそういうことをやってきたお陰で名前が広がっていったのはあるので(笑)。だけどこのままだと危険だなと思ったんです。一発屋というか色物というか、そういうバンドとして見られていることが多いと思うんです。でもこのアルバムが出たらみんなそんなことは言えないと思う。名前が広がった今だからこそ、心情を歌えたことにも意味があると思う。だから今までは準備運動というか。

-言葉における今までのゲスの延長線上といえば、「ラスカ」の一節から取られた『魅力がすごいよ』というアルバム・タイトルですかね。

こういうアルバムにしたからこそ皮肉を入れようと思って......"魅力がすごいよ"と(笑)。日本語的にちょっとおかしいですからね。

-(笑)等身大の絵音さんの素直な言葉が並んでいるので、絵音さんの心を近くに感じられるアルバムになっていると思います。それは楽器隊もそうで。3人の持ち味がすごく生かされていると思うんですよね。ほな・いこかさんのドラムは品があるし、休日課長さんのベースもそつがなくてクールで。ちゃんMARIさんの弾くダイナミックなクラシック・ピアノとか......それを聴いて私は"あ、久し振りにクラシック・ピアノのCD聴こうかな"と思って。ゲスくらいの規模のバンドが、いろんな音楽への扉を開くきっかけを作ってくれるのは、生活に豊かさを生むと思うんです。いろんなきっかけを作ってくれる作品でした。

ああ、それは本当にそうですね。僕らラジオでも、音楽をちゃんと聴いてもらいたいなと思って、自分たちが聴いてる洋楽とかかけるんですけど。やっぱり知ってもらいたいんです。ゲスの極み乙女。というポップなバンドから、深い音楽性を見出して、それを聴くきっかけになれたらいいなと。どうでもいいどうでもいいとか言いながら(笑)、リスナーの意識や耳が変わってくれることも大事かなと思っているので。こういうものが売れてくれるとやっぱり嬉しいなと思いますね。......でも、自分がやりたいことをやっているっていうのが、1番大きいんですけどね。

-歌と歌詞ばかりに重きを置いて聴いているリスナーさんも多いと思うんです。でもそういう人にも引っかかるであろうリフがたくさんあるから、リスナーを刺激する作品になっていると思います。アレンジどれも最高なんですけど、「サリーマリー」はとんでもない(笑)。

これは最後に「子犬のワルツ」(※ショパン作曲。ピアノ独奏のためワルツ)を入れてるんですけど、間奏に「サリーマリー」のコードで「子犬のワルツ」を弾いて、それに歌を乗せるという荒業まで(笑)。これは僕がただ単に「子犬のワルツ」が聴きたくて、ちゃんMARIに"弾ける?"って聞いたら、"弾けないので練習してきます"と言われて。彼女は練習すればなんでもできるので楽しいですね。

-そう考えるとスタジオで曲が変わるのも当然といえば当然なんでしょうね。

まあそうですね。「サリーマリー」に関しては最後までずっと悩み続けて......。

-この曲も"もっと大切な話がしたい/もっと救われるような言葉聞きたい""心臓の半分だけ優しさで包んで/脈を打つ度想える、そんな歌を歌うから"など、切実な願いや祈りを感じさせる言葉が多いです。

「サリーマリー」は特にそうなんですけど......やっぱりそれは自分の変化かなと思います。ゲスは結構いろんな人に聴かれてるバンドだから、よりもっと本当の中身を知ってほしい。だから"もっと話がしたい"と歌うし、本当に聴いてほしい。そういう気持ちが強く表れている曲だと思います。

-本当の中身、というと、誤解されることが多いということでしょうか?

ゲスはほとんどの人が誤解してると思いますね、僕は。ああいう(毒のある)ラップがあって、踊れるのがゲス、みたいな。みんなの中のゲス像はそういうものだと思うし。それは違う、というのをこのアルバムでわかってもらえたらいいなと思ってますね。こういう歌詞にして、楽器の音がより響くようになったし。今回のアルバムではいろいろ状況も変わるんじゃないかと思ってます。だからいろんな人の反応が楽しみですね。最後の曲で"ええ~っ!?"って思うと思うし(笑)。

-ラストの「bye-bye 999」はストリングスも入った壮大なバラードです。

これはもう最初から僕の頭の中に流れてて、入れたいなと思って。僕は自然な流れだったけど、僕が(スタジオで)アコギでこのフレーズを弾き始めたとき、メンバーは驚いてましたね。でもみんなこの曲が1番好きと言ってくれて。あんななりをしたメンバーなのに、全員こういう曲が1番好きっていう、そういうところもいいんでしょうね。だから4人でバンドをやっているんだと思います。

-このアルバムを聴いて、いい意味でゲスは急にジャンプ・アップして遠くに行ったと思いましたし、もっともっと遠くに行ってもらいたいと思いました。ただindigo la Endの活動もあれば、他アーティストへの楽曲提供もあるわけで......やはり絵音さんがお体を壊したりしないかは心配です。

最近睡眠時間はあんまり取れてないですけど。休んでても音楽のことばかり考えてしまうし......体はまあ、大丈夫でしょう(笑)。今もいろいろ作ってるんで、早く出したいなと思いますね。