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INTERVIEW

Japanese

あらかじめ決められた恋人たちへ

2014年09月号掲載

あらかじめ決められた恋人たちへ

Member:池永正二 (鍵盤ハーモニカ/Track)

Interviewer:森 樹

鍵盤ハーモニカによる叙情的な旋律と、テルミンも駆使した轟音バンド・サウンドとの融合が感情を揺さぶるインスト・ダブ・バンド、あらかじめ決められた恋人たちへ(以下、あら恋)。彼らの新作『キオク』は、昨年のツアーを収録したライヴ映像作品と、ヴォーカル曲も収録したEPによるDVD+CDの2枚組となった。シネマティックな音を追求してきた彼らの過去と未来が克明に刻まれた今作について、リーダーの池永正二に話を聞いた。

-2014年初リリースとなる『キオク』は、昨年のツアーの模様を中心としたDVDと、新曲を含む4曲入りCDの2枚組となっています。どのような意図でこの作品は生まれたのでしょうか。

去年のツアー("Dubbing06~LIVE DOCUMENT~")を、『CALLING』、『今日』、『DOCUMENT』と続いた3部作の終着点と位置付けていて、それを映像に残したいというのが始まりですね。でも残すだけじゃなくて、やはり過去は未来のためにあるので、記憶を次に繋げたいと思いました。それで、ツアーの後に完成した新曲入りのCDを1枚にパッケージして、DVDは過去からの記憶、CDは未来への記憶として、2枚組作品にしました。

-まずツアーの様子を収めたDVDについて伺いますが、撮影はどのように進められたのでしょうか。

ツアーに出る前から、ライヴの撮影を担当したnaoeikka(※ライヴ・シューティング・チーム)と話し合って、撮影の手法や演出を固めていきました。naoeikkaには以前からライヴの撮影をしてもらっているのですが、ライヴを追体験するようなものでも、打ち上げ風景を入れるでもなく、インスト・バンドならではの映像にしたいね、ってことで一致しました。

-機材車での移動中に見える車窓からの景色が挿入されていたりと、ロード・ムービー的な演出が施されていました。具体的なコンセプトはありましたか?

メンバーの素の表情を押さえるのは止めようと。あくまで音楽とライヴが主役なので。そこから見えるサウンドスケープや時間の経過を映像としてとらえようとすると、移動中の景色や現地で体感した風景が増えていきました。結果、会話のシーンはもちろん、ライヴでも僕らはMCがないですし、話し声がない詩的な映像作品になったと思っています。アート作品というよりも、あくまでドキュメンタリー作品ですが、人に寄っていってないっていうスタンスに辿り着きましたね。この映像で言いたいことは刻めました。過去から未来へ。ほんと生きていかねば、という気持ちです。

-一方でCDですが、こちらはどのように制作が進められたのでしょうか。

DVDの編集と並行して仕上げていったのですが、中でも「Going」は、これまでとは違うものを見せようという気持ちが強かったですね。「キオク」はこの作品のテーマ・ソングのつもりで作っていたんですが、壮大になりすぎたのでDVDには使いませんでした(笑)。でも、作品全体を示すものになったかなと思います。

-クガツハズカム(fromきのこ帝国)、吉野寿(from eastern youth)をゲストに迎えたヴォーカル曲が入っているのも、インスト・バンドとして知られるあら恋の新機軸と言えますね。

Brian Enoの「BY THIS RIVER」は昔から好きな曲で、いつかカヴァーしたいなと思っていて。佐藤さん(fromきのこ帝国)の持つ声質が素晴らしく、とてもハマったカヴァーになりました。「Fly feat.吉野寿」のラストのノイズ・パートは、DVDにも収録されているライヴ(※「Fly」)の演奏を足しています。DVDと同じ音を加えることで、例え気付かないくらい微妙なことであっても、どこか繋がりが立ち上ってくるだろうと思っています。そういう気配って、あら恋のとても重要な要素なので。

-3部作の完結篇とも言える本作を経て、これからのあら恋はどのような展開を考えていますか?

なにか初心に帰っています。大御所でもないのに、勝手に。6年前の上京したての感じですね。だからジャンルに関係なく好きなもの作ろうと考えていて。男は40歳からですよ(笑)!

-アーティスト写真も今回新しくなりました。衣装も黒で揃えて、イメージが変わりましたね。

やっぱり、これまでと同じことをしていても、仕方ないので。もともと、僕なんかは普段着でやるのが1番だと思っていたオルタナ世代なんで、カッコつけるのがださいっていう(笑)。でもそれは、みんなカッコつけてたからそのカウンターとして成り立っていたわけで、今はもうそうじゃない。せっかく照明もPAも入れてやってるのに、ステージに立つ人間がコンビニに行くような服じゃあダメだと。音楽活動20年目にして気がつきました(笑)。

-なるほど(笑)。今回の『キオク』のリリースを記念して、東名阪でライヴ"Dubbing 07 記憶の旅"が決定しています。今回はそれぞれでゲストを呼んでのイベントになっていますが、どのようにゲストを決めていかれたのでしょうか。

単純に好きなだけなんですが、The fin.(大阪編ゲスト)とか素晴らしいですよ。OGRE YOU ASSHOLE(名古屋編ゲスト)もWorld's End Girlfriend(東京編ゲスト)も、あら恋とちょっと同じ要素を感じるんですよ。勝手にそう思っているだけなのですが(笑)。どちらも今でもむちゃくちゃかっこいいです。WEGとは、12~13年前に1度、どちらもソロでライヴをしていたときに名古屋で対バンしていて。あれ以来なのでなんか感慨深いです。お互い映画音楽とかやったりしているので、場所がキネマ倶楽部ってのもとても面白いと思います。もちろん映像を使用したライヴになります。3公演ともオリジナリティのあるイベントになりそうなので、ぜひ観に来てください!

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