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INTERVIEW

Japanese

中ノ森文子

2014年06月号掲載

中ノ森文子

Interviewer:吉羽 さおり

2008年にガールズ・バンド中ノ森BANDを解散後、ソロ活動をスタートさせた中ノ森文子が、6月11日にメジャー1stシングル『Get the glory』をリリースする。ノイジーなギターが道を切り裂いていく、風通しのいいロック・チューン「Get the glory」と、カップリング「ROLL INTO YOU」は軽やかなギターがフックとなったポップなエレクトロ・チューン。サウンドも、ヴォーカルのタッチも違った2曲で、彼女の意志や試みを伝える作品になった。ソロ作として2012年にアルバムを発表しているが、中ノ森文子として歌いたい歌、紡ぎたい音楽とは何か、改めて訊いた。

-TVアニメのオープニング・テーマにもなっている「Get the glory」は、パワフルに突き進んでいくことを歌った曲となりましたが、どういった心境でこの曲に向かったのでしょうか。

今回は先に、TVアニメ"テンカイナイト"のオープニング・テーマということでお話をいただいていたので、アニメの内容にも寄せつつなんですが、アニメを観て曲を聴いた人には"これはここのシーンのことだな"とか、そうではなくどこかで曲が流れていたのを聴いた人にとっては、前向きに突き進んでいく、栄光を掴むぞっ!ていう、誰が聴いても元気のもらえるような、その中間点にいければいいなと個人的には思っていました。いろんな入口から楽しめる作品にしたかったですね。

-今回はパワフルな曲になりましたが、バンドからソロになることで、こういう音楽をやりたいというのはありましたか。

絶対的なものとしては、ソロになって音楽をやっていく上で、音楽を通して嘘をつきたくないという信念はありましたね。本当はこうじゃないのにやらないといけないとかではなく、作品は残っていくものなので、将来自信を持ってわたしはあのときこういう心境でこういう作品を作ったんだよ、聴いてよって言えるものを作っていきたいと思っていました。

-そういったことでジレンマを抱えていた時期もあったり?

そうですね。嘘というか、制約がたくさんあった時期もあったので。そこで、本当は楽しい音楽が、楽しくないとは言わないんですけど、音楽をやっている気がしなくなる時期というか。

-こうしなければという縛りがあるとどうしても難しくなることもありますね。

そうですね、そこってあまり音楽と関係ないなって思うところでもあったので。自分がいいと思えるものを形にして、作品にして、伝えたいことだったりとか、ありのままの自分から出てくる感覚や感性を伝えていくものとは別のところで、苦しんだ時期もありました。ソロになってからはどんな状況であれ、自信をもって、自分自身が素晴らしいと思えるものを伝えていける人たちや場所、チャンスを、良くも悪くもちゃんと選んで素敵な人たちと作品を出したいっていうのはずっとありましたね。

-では、気持ちとしてはいろんな制約などがはずれてラクにはなっているんですか。

そうなんですけど、バンドをやっていた頃よりは年齢を重ねているじゃないですか。バンドをやっていたときは若さもあったので、怖いもの知らずで突っ走っていた部分もあって。

-メンバーもいますしね。

そうなんです。その中で、ああいう華々しいデビューは陽もあれば陰もあるというか、ジェットコースターのような人生なので。その陰のときに、自分の気持ちが擦りガラスのように少しずつ傷がついていって、クリアなものがクリアに見えなくなったりとか。恐怖心を覚えて、本当はもっと突っ走れるのにどこかでブレーキをかけてしまったりとか。大人になればなるほど、大切なところにブレーキをかけてしまう自分みたいなジレンマもまた増えてきて。今回、「Get the glory」を作るときに自分のなかで1つきっかけになったのは――"テンカイナイト"というアニメは小さい男の子とかもたくさん観ていると思うんですよ。曲もかっこいいロックだし、"少年"というのがイメージにあったんです。小さい頃って怖いもの知らずで突っ走ってたじゃないですか。けれども大人になると、"ああ、でもこれをやるともしかしたらこうなるんじゃないか"とか、先に考えてしまって。でもそういう鎖をはずして、"昔はこう突っ走ってたよな、でもそれが素敵だったよな"ってもう1回少年の心というか、過去に戻ったような気持ちで、今回はそういうものをテーマにできたらいいなと思ったんです。

-では、自分を後押ししてくれるような歌でもある?

はい、たぶんみんな大人になるほど、本当の"中の自分"を見失ってしまうことも増えてくると思うので。でもそれを、潜在的には気づいてはいると思うんですよね。わたし昔こんなんじゃなかったよなとか。やっぱどこかで擦りガラスになってる部分をもう1回、クリアなガラスに戻してキラキラ輝いていた、怖いもの知らずにただ真っ直ぐに突き進んでいる昔を思い出して。その中で、わたしはテーマを少年にすることで、再スタートではないんですけど、新たな気持ちでこの1枚を作品を作っていたんです。そういう気持ちで、「Get the glory」には臨みました。

-今作で改めてメジャーで活動をするということでは、緊張感というか、そういう思いも強かったりするんですか。

昔はそういうこともあったし、そういう意味でもプレッシャーもありました。でも基本に返って、わたしたちができることは、音楽を作って、自分たちの納得のいくもの、相手に喜んで欲しいと思う作品を作ることなので。あまり、メジャーとかインディーとかは考えずに、とにかくいいものを人に伝えたいっていう、そこだけをシンプルに突き詰められた。いい音を作って、いいパフォーマンスをして、自分で納得をして、みんなに観てもらっても恥ずかしくないものを伝えていくことだけに今回は、大人になって集中できました(笑)。