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INTERVIEW

Overseas

Jack White

2014年06月号掲載

Jack White

-じゃあ、19歳の自分は今のあなたの目にどんな風に映りますか?

ただとにかく、まだこれから人生を丸々体験できるわけだから"お前はラッキーだな"って思う(笑)。今の僕はそれなりに人生体験を積んだ大人で、世界中を何度も旅して、様々なシナリオに巻き込まれてきて......ここ数年間にひとつ気付いたことがあって、自分の周辺を見回した時、何をするにしても僕が1番最初だったってことに気付いたんだよ。結婚したのも僕が最初で、親になったのも僕が最初で......自分に近い人が僕より先に何かをやったってケースが、全くないんだ。今では友達にも家族にもみんな子供がいて、みんな一緒に仲良く育っているんだけど、僕の子供はその5年くらい前に生まれていて、周囲に同じ年頃の子供が全然いなかった。だから、もっと待てば良かったなって思うこともある。他人のあとを追うってことがないんだ。なぜかいつも、ふと気付くと"あれ、これってまだ誰もやってないよね"って状況にある。

-で、自力で道を探さなければいけないわけですね。

うん。時々そのことで腹立たしく感じることもあるよ。すでに経験している人に相談出来たら、楽だよね。だからこそ僕は、年上の人たちに惹かれるんだと思う。若い頃からそうだったんだ。いつも年上の人たちとつるんでいたし、師と呼べる人たちがいたし、そういう人たちに相談を持ちかけたり、インスピレーションをもらってきた気がするよ。

-アルバムの話に戻りますが、最終的に書き上げた歌詞は、元ネタになったストーリーとどの程度接点があるんでしょう?

ほとんどないよ。1~2行同じ文が含まれているとか、キャラクターが置かれている状況が同じとか、その程度の接点はあるけど、そこからスタートして、全く新しい作品を作り出したからね。そもそも、曲作りのネタが枯れて困っていて"こんなネタが見つかって助かった!!"っていうような経緯で始まった試みじゃあない。19歳の時に書いたストーリーは、音楽とは全く関係ないところで成立していた一幕物の戯曲や詩だったわけで、それらを解体して、パーツを選んで、新しい音楽作品に生まれ変わらせることを目的にしていた。曲は全て、新たに書いたものだしね。

-しかも、曲が完成したあとで、元になった文章は全て破棄したそうですね。

ああ(笑)。

-そこまでしなくてはいけなかったんですか?

うん!なぜって、僕はそういう男なんだよ。完成した作品だけを聴いて、それを受け止めてほしいし......そうしなくちゃいけないように感じたんだ。そこから何か真新しいものが生まれたなら、元ネタに縛られるべきじゃないと思うし、19歳の時に書いた文章は、そのままの状態では未完成で、不十分だった。戯曲と言っても、それを実際に演劇にしたいと思うような代物じゃなかったんだ。まあまあって出来だった。まだ19歳だったからね。でも今こうして僕は、そこから得られるものを得て、別の形で世界に送り出すんだよ。

-『Lazaretto』というタイトルに込めた想いは?

アルバムを作りながら自然にこの言葉がタイトルとして浮上して......アルバムにぴったりの、素晴らしい言葉だなって手応えがあった。収録曲に漂っている様々なアイデアを、全て網羅して包み込んでくれる言葉だと思ったんだ。美しい響きの言葉で、英語じゃないし、どこか知らない世界に誘ってくれて、意味を知らなければ自分で探し出して、新たな発見ができる。そういうプロセスが大好きなんだよ。"blunderbuss"って言葉も然りで、意味を知らない人が多かったと思うんだけど、響きが美しくて、興味をそそられて調べて、そうすることで未知の世界に旅することができる。タイトル・トラックに登場するキャラクターにも色んな意味で関係する言葉だからね。とにかくしっくり来たんだ。前作の時と同じく。『Blunderbuss』も曲名だったしね。

-タイトルと同様に不穏なアートワークについても教えてもらえますか?

LAで見つけた家で撮った写真なんだ。あんな風に像が並んでいるのを見かけて、じゃあ写真でも撮ろうって話になった。何に使うかってことはあまり考えずにね。でも上がってきた写真を見ると"ワオ、これぞアルバム・ジャケットに相応しい!"と閃いた。絶対にこれをジャケットにしようって決めたよ。アルバムには亡霊とか神とか、そういう類の話があちこちで聴こえて、新時代のブルース・マンみたいなところがあるよね。僕は以前から、自分が"21世紀のブルース・マン"であるかのように感じていたし、この写真での僕はまさに"21世紀のブルース・マン"だろ?ほら、Robert JohnsonかBlind Willie McTellがそこに写っていたとしても不思議じゃない。そんな写真と出会えたっていうのは、すごく興味深いね。

-ブルース・マンと言えば、本作ではストーリーテラーに徹していて、あなたが歌っていることにじっと耳を傾けていると、物語に引き込まれます。

ああ。このアルバムでの僕は、何かを伝えたいという気持ちがすごく強かった。曲に登場するキャラクターたちに、何らかの主張を持たせたかった。ここ20年ほどの音楽を振り返ってみると、主張を持とうとしないソングライティングが目立ったよね。ソングライターは、被害者を演じるか、誰かを攻撃するばかりで。それよりも、一人称でストーリーを伝えようじゃないか。ストーリーテラー自身にもストーリーそのものにも、色んな物事に関してちゃんとリアルな主張や意見がある、そういう曲を書きたかった。そういう曲を、僕自身も聴きたい。誰かに話しかけてほしいんだ。そして、僕に何かを考えさせてくれて、何らかのアイデアを掘り下げたくなるような曲を聴きたい。キャラクターたちが考えていることは、正しいかもしれないし、或いは、間違っているかもしれない。僕には分からないよ。でもとにかく、彼らには主張があるのさ。