Overseas
THE NATIONAL
Member:Matt Berninge(Vo) Aron Densser(Gt)
Interviewer:遠藤 孝行
ブルックリンの最後の大物と言われるTHE NATIONALがニュー・アルバムを完成させた。前作『Boxer』で各メディアに高い評価を受けた彼らだが、今作はその前作のメランコリックなサウンドを引き継ぎながらよりドラマティックに変貌を遂げた。新たに作られたというスタジオでレコーディングされた今作はしなやかさを持ちながらとてもエネルギッシュ。大きな驚きを持って迎えられるだろう。昨今の活性化するUSインディー・シーンの兄貴分としても名高い彼らに新作についてたっぷりと語って頂いた。
-アルバム完成おめでとうございます。まずは今作を作り終えての手応えをお聴きしたいんですが。
Matt Berninge(以下M):とても満足しているよ。まず今作はどんな風なレコードにするか分からないまま作り始めていった感じだけど、可能な限りのべストは尽くせたと思ってるよ。
-前作の『Boxer』から3年というインターバルがありますが、この期間はどのように過ごされてきたのでしょうか?
M:『Boxer』が出てから1年半ほどツアーがあって、その後それぞれバンドを離れて生活してたんだけど、Aronの家の裏庭にスタジオを作ろうという計画が始まったんだ。それを考えると新作の曲作りは2年ほど前から始めたということになるのかな。自分達のスタジオが出来たということで、曲作りも割とゆっくり自分達のペースで始めた感じなんだけど、やっぱりアルバムの締め切りが迫ってくるとゆっくりもしてられなくなるよね(笑)。まあ前作から3年経ってるからメンバーそれぞれ変化はあると思うんだけど、僕の場合は娘が生まれた事が一番大きな出来事で考え方も大きく変わったね。ただ改めて3年間を振り返ってみるとヘッドフォンをしながらずっと音楽を作っていたなと思うよ(笑)。
-なるほど(笑)。新作『High Violet』は前作と比較すると音楽的にもバラエティに富んだ作品で、またとても美しくドラマティックなアルバムだとも思います。先ほどコンセプトを決めずアルバム作りを始めたと言っていましたが、最終的にはどのようなアルバムになったと思いますか?
M:そうだね。まずテーマとしては“Big”、“Fan”、“Loose”、“Beautiful”という4つは頭の中にずっとあった気がする。それと前作『Boxer』とは違ったものにしたいという気持ちもあった。ただそれをどのようにしたらいいのかというのは頭の中になくて、実験を繰り返しながら音作りを進めていったという感じかな。音作りのイメージが掴めてくるとその4つのキーワードにそって曲がどんどんと出来上がっていったんだ。
Aron Densser(以下A):Mattとしては今作で自信を付けたんじゃないかな。それが大きかったと思う。僕達からすると今まで無かったドラマティックな展開のある曲が出来上がると躊躇してしまうんだけど、今回はそれでも僕らならやれると思えたんだ。前作『Boxer』は抑えの効いたトーンでずっと変わらずにそのままっていう感情の流れがあったんだけど、今作は曲ごとにガラッとトーンが変わるダイナミックな作品になったと思う。元々僕らは華々しい展開やドラマティックな感じが好きじゃなかったんだ。なぜこのような変化があったのかと考えると『Boxer』のツアーで沢山のオーディエンスの前でやる喜びを知ったりとか、後は自分達のスタジオで作れた事も大きかったんじゃないかな。豪華なスタジオで作るよりも、自分の家のガレージの延長のようなスタジオでリラックスして作れたことが今作には大きく影響してると思うな。
-前々作もそうなんですが、前作『Boxer』はPitchforkを始め各メディアで高い評価を受けました。今作を作る上でそれはプレシャーにはなりませんでしたか?
M:今作よりも前々作の『Alligator』から前作の『Boxer』の時の方がプレッシャーはあったね。『Alligator』で僕達はPitchforkや各メディアに初めて取り上げられてもらったから『Boxer』を作る時は気掛かりなことが沢山あったよ。はたして僕らは『Alligator』で開いたドアをくぐり抜けて行けるのか、あるいはそのまま消えてしまうのかというプレッシャーはあった。だけど幸運なことになんとかそこを乗り越える事が出来た。だから今作では何をやっても大丈夫、曲さえ良ければという所まで来たんじゃないかなと思う。やっぱり違うものを作らなきゃという気持ちもあって、『Boxer』は『Alligator』とは全く違う作品でしょ?違う新しいものを作り続ける事で僕達は続けて来れたわけだから、今作もそれで大丈夫だと思った。メディアの言うことは気にせず、自分達が楽しめて納得出来る音楽を作り続ける、もちろんそのスタンスで僕らはずっとやって来たつもりだけど、それを貫き通すことについてのプレッシャーは今作ではそんなに無かったと思う。だからこそ今作『High Violet』は今まででベストと言える作品が出来たんだと思う。
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