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Japanese

sora tob sakana

2018年05月号掲載

sora tob sakana

Writer 杉江 由紀

少女たちは空飛ぶサカナの夢を見るか―― 風間玲マライカ、神﨑風花、寺口夏花、山崎 愛の4人からなるsora tob sakana(読み:ソラトブサカナ)は、2014年7月に結成されたアイドル・ユニットだ。
 
かのASOBISYSTEMとアイドル横丁がタッグを組み創設されたアイドル・レーベル"フジヤマプロジェクトジャパン"から、ハイスイノナサやsiraphなどで活動している照井順政をサウンド・プロデューサーに据えて制作された1stシングル『夜空を全部』が2015年秋に発表された際には、いわゆるドルオタ以外の音楽ファン層からもその高い作品性が正当に評価され出すこととなり、彼女たちはそれを機にただならぬアイドルとしての異彩を燦然と放ち始めたのである。
 
そんなsora tob sakanaは、今年2月に主催イベント("天体の音楽会")を中野サンプラザホールにて開催するなど、ライヴ活動の面でもここまでに着実な成長を遂げてきたことになるが、いよいよ5月16日にはワーナー ブラザース ジャパンからのメジャー・デビューも決定したというから、その勢いはもはや本物であると言えよう。むろん、音楽面での完全バックアップは照井順政が引き続いて担っており、センスフルな楽曲たちを4人の少女たちが透明感のある声をもって歌い上げることによって、日本におけるアイドル歌謡の歴史をある意味では逸脱するような世界が繰り広げられている様はなんとも鮮烈でいて興味深い。そして、新たなる第一歩を踏み出すべき今という大切な瞬間を、どこか逆説的に捉えたとも思える"alight ep"というこの作品タイトルも、sora tob sakanaの持つ特異性を如実に表しているように感じられはしまいか。
 
ポスト・ロックやエレクトロニカの色合いが滲むリード・チューン「Lightpool」から幕を開ける今作『alight ep』は、とにかくどこをとっても緻密にして繊細な仕上がりであるところが最大の持ち味だ。小気味よいリズムと、どこかオリエンタルな香りが漂うやや難解なリズムが交錯する「鋭角な日常」。少女たちが紡ぐからこそのリアリティとファンタジーが、ともに絶妙なバランス感で同居するポエティックな「秘密」。アレンジャーとして白戸佑輔が参加することで、ブラス・アンサンブルが楽曲に華やかさを与えている「Brand New Blue」。叙情的な響きを孕んだフォーキーな旋律と、歌詞という名の物語を彼女たちの歌がいい意味で淡々と紡いでいく「蜃気楼の国」。リード・チューンとの関連性について思いを馳せることができるタイトルを持っていると同時に、曲調としては今作の中では最もアイドル然とした可憐なニュアンスが感じられる「Lighthouse」。結果、これら全6曲が現時点においてsora tob sakanaの持つ魅力を全方位的に引き出したものとなっていることは、まず間違いない。
 
ちなみに、すでに今作に次ぐ情報も公式に発表されているようで、7月からオンエアが開始されるTVアニメ"ハイスコアガール"のOP曲は、sora tob sakanaが担当することになっているのだとか。さらに、来たる7月1日には東京国際フォーラム ホールCにて活動4周年を記念したワンマン・ライヴも開催されるそうだ。
 
ファンの間では、いつのころからか"オサカナ"の愛称で親しまれるようになっているsora tob sakana。きっと彼女たちは、ここから音楽シーンという名の大海原を好きに泳ぎ回り、必要があれば大胆に空も翔ぶような自由さを持った存在へとなっていくのだろう。そう、少女たちは今まさに現在進行形で空飛ぶサカナの夢を見ているのだ。


 

▼リリース情報
sora tob sakana
メジャー・デビュー・ミニ・アルバム
『alight ep』

[Warner Bros. Home Entertainment]
2018.05.16 ON SALE
1000720330/¥2,000(税込)
amazon TOWER RECORDS HMV

1. Lightpool
2. 鋭⾓な⽇常
3. 秘密
4. Brand New Blue
5. 蜃気楼の国
6. Lighthouse

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