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チャットモンチー

チャットモンチー

Writer 石角 友香

今年7月で"完結"するチャットモンチー、初のトリビュート・アルバム。メンバーとスタッフが検討しオファーした14組に加え、一般公募で選ばれた2組による計16曲が収められている。各アーティストと選曲の組み合わせもいろいろで、各々のアレンジも原形に忠実なものから完全なる再構築まで様々だが、いかにチャットモンチーの音楽がチャットモンチーとしか言いようのないものであり、また、いかに彼女たちの楽曲と存在が愛されてきたかを再認識させられた。作品での実証がここにある。


MEMBER COMMENT

橋本絵莉子

プレゼントをもらったような気持ちで、私たち自身が嬉しいアルバムになりました。作った曲に対して、曲でお返事してもらうなんて、なんとバンド冥利につきることでしょう。今回初めて、トリビュートが、音楽を作っている人たちにとって特別なアルバムだということがわかりました。

福岡晃子

聴くほどに元気をもらいます。トリビュートしていただく側の気持ちになって初めて、新しい視点でチャットモンチーを見つめることができました。素晴らしい景色をありがとうございます。本当に感謝です。


1. ハナノユメ / 忘れらんねえよ

チャットモンチーの1stミニ・アルバム『chatmonchy has come』の1曲目にして、彼女たちの儚さとしたたかさという核心を表明した言わずもがなの代表曲。そこにある真実にひるむことなく、今にも泣き出しそうな柴田隆浩(Vo/Gt)の歌が挑むように抱きしめる。リバーヴィな序盤から加速し、どんどんカオティックになり絶叫に至る忘れの解釈は、チャットへのストレートな感謝となって駆け抜ける。律儀なコーラスのコピーは愛らしい。

2. Make Up! Make Up! / CHAI

隠したい、良く見せたい。女の子の矛盾をメイクになぞらえて表現し、オリジナルに感じられる"ブルージーな部分"をすっこ抜いて、あっけらかんと、でも"女の子だからわかるよね"ぐらいのテンションでCHAI流のメッセージへと転化。80s風のシンセ・サウンド、四つ打ちが醸し出すポスト・パンクなビート、ぶっといグルーヴ、そしてマナ(Vo/Key)の異空間を漂うようなファニー・ヴォイスが、モヤモヤすらアートにしてしまった感がある。

3. シャングリラ / ねごと

エレクトロニック且つハウス・テイストのイントロで"おっ?"と思わせつつ、おなじみのサビ始まりではオリジナルに忠実なギター・サウンドでメリハリをつけ、再びシンセで浮遊感のあるパートへ繋ぐという、今のねごとらしさ全開のカバー。この曲をダンス・ナンバーと解釈したときに、ハウスとファンキーなギター・カッティングの両方をアレンジに違和感なく溶け込ませた彼女たちのセンスの良さに感嘆する仕上がりだ。

4. 初日の出 / People In The Box

チャット史上最もオルタナティヴで生々しかった"変身"期の楽曲の中でも、圧のないLED ZEPPELINのようなこの曲を楽しんで再構築できるのは、参加バンドだとたしかにピープルしかいないだろう。原曲のアレンジは影も形もなく、"朝日か夕日かもわからないやつが"というフレーズを波多野裕文(Vo/Gt)はただ歌いたかったんじゃないか? と思わせるぐらい機械仕掛けのようなマーチング・ドラムも、通りすがるようなベースも、愉快且つシニカルに響く。

5. 惚たる蛍 / Homecomings

チャット初期と今のホムカミの"インディー・ギター・ロック"の捉え方と消化の仕方の共通点と相違点がよくわかる、意味あるカバー。特にクリーン・トーンでアルペジオを丁寧に奏でるギター、畳野彩加(Gt/Vo)の柔らかい声や女声コーラスが醸し出す柔らかさと、シューゲイザー・サウンドに変化していく後半との対比はいかにもホムカミらしい。両バンドとも根底にあるオルタナ魂をふんわりとした感触で表出するところに、頼もしさを感じる。

6. こころとあたま / ペペッターズ

一般応募645組の中からメンバーとスタッフにより選考された2組のひとつである、神戸出身の3ピース・バンド。男性ヴォーカル、エレピやスクラッチも入った、オフビートでグルーヴィな、オリジナルとはまったく違うアレンジが面白い。コードの当て方もジャズやボサノヴァからの参照もあり、一歩引いた感じで自分を許してあげるニュアンスに聴こえるあたりにこの曲そのものの研究がかなりなされているようにも思えて、好感度高し。

7. バスロマンス (Inst.) / YOUR SONG IS GOOD

オリジナルも1番はセカンド・ライン風のリズムで、どこかアメリカの土臭さを感じるが、なんとユアソンはルーツ・レゲエ~ダブ調のインストに料理。歌メロはピアニカに置き換え、懐かしのシンセ・ドラムのような音に、アナログ・シンセも聴こえて、全身が解されるよう。もしやそれは"お風呂繋がり"......? そんなふうに想像したりしてアレンジの意味を考えながら聴くのも、チャットとカバーしたバンドの関係性を知る楽しみのひとつだ。

8. きらきらひかれ / フジファブリック

チャットの魅力である生命感が鬼気迫るほどの勢いで表現された原曲に対して、肝にある生命感を、透明で広い空間を感じさせる音像に昇華したアレンジ。シンセ類は最低限しか鳴っていないけれど、ディレイやエコー感のあるギター、拍動を感じさせるベースやドラムが一体になることで醸し出されるフジファブリックなりの解釈なのだろう。シンプルに聴こえつつ、アンサンブルの抜き差しでテーマを打ち出すスタンスに喝采を。

9. 世界が終わる夜に / 集団行動

チャットの中でも社会性を感じさせる、切なさとも違う心の部分が鷲掴みにされるこの曲。この歌詞を歌うのに"誰風"という色がなく、告発するような圧のない齋藤里菜の声が、むしろ歌詞を意識させる。とてもニュートラルなポップ・サウンドに仕上げつつ、一瞬意識がフッと薄れるようなコード・ワークを使う真部脩一(Gt)のアレンジもいい。問題は宙吊りにされたまま、そんな意識だけが残るアレンジに、集団行動がこの曲を取り上げた意味を感じる。

10. 真夜中遊園地 / 川谷絵音

オリジナルのマッシヴで瓦解していくような感覚とは対照的に、レゲエ/ダブをベースに、ホーンも加えてローが魅力的な隙間の多いアレンジに再構築した絵音バージョン。だが、ジェットコースター感や真夜中の遊園地の孤独感は、カオティックに瓦解していくアンサンブルや彼ならではの語りの部分で、原曲に対する愛情として表現されている印象がある。偶然かもしれないがタイトルに親和性を感じるのもポイント。

11. 湯気 / Hump Back

林 萌々子(Vo/Gt)はダイレクトにチャットモンチーの影響を受けているらしく、今回のトリビュートの中でも最もストレートなカバーがこの曲。ハイハットの4カウント、歪み系のギター・リフ、遠くに投げ出すように歌う林の声。そのアレンジはどこまでもシンプルで、日本のロック・バンドに影響を受けて2010年代にデビューしたバンド全般に通じるドメスティック色があるのだが、そのむき出しのイマココ感が、Hump Backである必然なのだろう。

12. 恋愛スピリッツ / グループ魂

本作一番の飛び道具。疾走する8ビートはソリッドだが、唐突に差し込まれる暴動こと宮藤官九郎書き下ろしによる、港カヲルとチャットのふたり演じるスナック"チャットモンチー"を舞台にしたコントの内容が"あの人"に対する復讐(!?)めいた人物描写になっていて、大笑いするも苦笑するも、はたまた怒るのも受け手次第というところか。いずれにしてもチャットのふたりが大人になったからこそ通用するコントなのは間違いない。

13. 余談(スチャットモンチー ver.) / スチャダラパー

歌詞の内容もだが"余談"というタイトルもテーマも、非常にスチャダラパーと親和性が高い気がしてならない。カバーというか、リミックスに近い仕上がりで、橋本絵莉子のヴォーカルを残しつつ、BoseとANIのラップを加え、ふわふわバウンスするようなハウシーなSHINCOのトラックに乗る、不思議な聴感だ。こうした自由度はきっとチャット後期のふたり体制に何かしらの影響をもたらしたのだろう。両者の温度感の近さを感じる。

14. 染まるよ / きのこ帝国

オリジナルを吸い込んで、そのままきのこ帝国として吐き出したらこうなったと思えるほど自然なカバー。底に流れるコード感がマイナーに変更されているのもごく自然で、遠くで風が巻いているようなあーちゃんのギターもいつもの彼女たちらしい。透徹していて冷たく、だからこそ少し悲しい諦観はリアルさを増している。"歩き慣れてない夜道"とか、"煙草"とか、そうしたワードもまるで佐藤千亜妃(Vo/Gt)が自ら発したかのよう。

15. 小さなキラキラ / 月の満ちかけ

こちらも一般公募から選ばれた東京で活動中のふたり組。女性のエレピ弾き語りと、ストリングスなのか打ち込みなのか、シンガー・ソングライター的な部分と音響を大事にする部分が両立している。J-POP的でもあり、ある種、最もチャットモンチーのイメージとは遠いのだが、この人が「小さなキラキラ」のメロディと歌詞を愛してやまない姿勢がただただ柔らかくまっすぐに染み込んでくる。チャット楽曲の解釈の幅広さを実感させるカバー

16. 東京ハチミツオーケストラ / ギターウルフ

絶叫してはいるが、故郷を離れて東京で生きる決意をした"あのころ"を、セイジ(Vo/Gt)もきっと経験したんだろう。真のオルタナティヴとはこうも共振するものかと思うほど、ギターウルフのチャット・カバーには違和感がない。ひたすら繰り返すコード・ストローク。縦が揃うことはまったくないリズム。だが、この先に広がる大都会に踏み出す清々しい決意にも似た音の爽快感はどうだ。これが愛でないならなんだというのだ。



▼リリース情報
V.A.
TRIBUTE ALBUM
『CHATMONCHY Tribute ~My CHATMONCHY~』

2018.03.28 ON SALE
KSCL-3099/¥3,200(税別)
[Ki/oon Music]
※初回限定デジパック仕様
amazon TOWER RECORDS HMV

1. ハナノユメ / 忘れらんねえよ
2. Make Up! Make Up! / CHAI
3. シャングリラ / ねごと
4. 初日の出 / People In The Box
5. 惚たる蛍 / Homecomings
6. こころとあたま / ペペッターズ
7. バスロマンス (Inst.) / YOUR SONG IS GOOD
8. きらきらひかれ / フジファブリック
9. 世界が終わる夜に / 集団行動
10. 真夜中遊園地 / 川谷絵音
11. 湯気 / Hump Back
12. 恋愛スピリッツ / グループ魂
13. 余談 (スチャットモンチー ver.) / スチャダラパー
14. 染まるよ / きのこ帝国
15. 小さなキラキラ / 月の満ちかけ
16. 東京ハチミツオーケストラ / ギターウルフ



LIVE INFORMATION

CHATMONCHY LAST ONEMAN LIVE ~I Love CHATMONCHY~

7月4日(水)日本武道館
OPEN 17:30 / START 18:30(終演 21:00予定)

【チケット】全席指定 ¥8,640(税込)
※記念品付き/3歳以上チケット必要
チケット一般発売日:4月14日(土)~

チャットモンチーの徳島こなそんそんフェス2018
~みな、おいでなしてよ!~

7月21日(土)、22日(日)アスティとくしま
OPEN 11:00 / START 13:00(終演 21:00予定)

【チケット】各日 ¥10,800(税込)
オフィシャル・サイト:https://www.konasonfes.jp/

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