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RADKEY

2015年09月号掲載

RADKEY

Writer 山口 智男

東京のみの出演だったが、2014年3月、"PUNKSPRING"に出演するため、RADKEYは初来日を実現させた。もちろん日本ではまだちゃんとデビューもしていない新人だ。注目度は海外と比べれば、お世辞にも高いと言えるものではなかったが、それでもこの3人組の演奏を観た人は、演奏終了後、メンバー3人が客席に放ったかめはめ波とともにユニークなパンク・ロック・サウンドを覚えているかもしれない。それから1年半。RADKEYがついに『Dark Black Makeup』と題したデビュー・アルバムをリリースする。これをきっかけに彼らはさまざまなメディアに取り上げられ、改めてそのユニークさに見合った注目を集めるに違いない。

ミズーリ州セイント・ジョセフからロック・シーンの最前線に飛び出してきたRADKEYの結成は今から5年前。2010年のこと。Dee(Gt/Vo)、Isaiah(Ba/Vo)、Solomon(Dr)のRadke3兄弟がバンドを始めたことがそもそもの始まりだった。ライヴ・デビューは翌2011年。ミクスチャー・ロックのベテラン、FISHBONEの前座だったという。このときのメンバーの年齢は、Deeが19歳、Isaiahが17歳、Solomonが15歳。まだ10代とはいえ、彼らは結成当初から光るものを持っていたようだ。
その後、アフリカン・アメリカンによるオルタナティヴなミュージック・フェスティバル、"AFROPUNK FEST"を皮切りに"SXSW"、"Riot Fest"、"Download Festival"、"Coachella Valley Music And Arts Festival"といった名だたるフェスに出演しながら、めきめきと頭角を現してきたRADKEYは、ロック・シーンを再び盛り上げる10代バンドとして、THE STRYPES、THE ORWELLSらとともに注目を集めていった。

『Dark Black Makeup』はそんな彼らが満を持してリリースするデビュー・アルバム。"ラウドでキャッチーなロック・レコードは今でも十分イケてる。それがこのアルバムで1番伝えたいことなんだ"とメンバーが語るとおり、ラウドでキャッチーなロック・レコードには違いない。しかし、ブギのリズムを持ったTrack.1「Dark Black Makeup」を始め、アルバムに収められている全14曲がアピールするのは、そんなひと言では表現しきれないユニークさだ。PUNKSPRINGで初めて彼らのライヴを観たときは年齢とは裏腹にレトロな志向を持った面白いバンドという印象だったが、デビュー・アルバムを聴き、RADKEYが持つ魅力がはっきりしてきた。朗々と歌い上げるバリトン・ヴォイスはMISFITSや(テンポが速い曲では)THE OFFSPRINGを思わせるが、ブルースの影響が滲むTrack.5「Best Friends」などではBLACK SABBATHやBLUE CHEERを連想させつつ、終盤、いきなり80's調のハードコア・ナンバー(Track.12「Glore」)を炸裂させ、リスナーを驚かせる。単にレトロというだけでは片づけられない、時代を大胆に縦断するそんなミクスチャー感覚を持っているからこそ、あのFISHBONEも彼らを前座に抜擢したに違いない。因みにRadke3兄弟はMISFITS、RAMONES、THE WHO、DEATH(※BAD BRAINSよりも結成が早かったアフリカン・アメリカンによるパンク・バンド)などから影響を受けたという。
夫に裏切られ、精神病院に監禁される女性のことを歌った「Best Friends」「Glore」を始め、"あまり気持ちがいいとは思えないことを歌にした"という各曲のストーリーテリングにも耳を傾けたい。そんな試みは将来、ロック・オペラに発展するかもしれない。ワイルドなルックスからはちょっと想像しづらいインテリジェンスもまた、この3人組の魅力なのだ。

 


RADKEY
デビュー・アルバム
『Dark Black Makeup』
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1. Dark Black Makeup
2. Romance Dawn
3. Love Spills
4. Parade It
5. Best Friends
6. Le Song
7. Hunger Pain
8. Feed My Brain
9. Sank
10. Song of Solomon
11. Evil Doer
12. Glore
13. Feel
14. Innocents Tonight※
※日本盤ボーナス・トラック

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