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Japanese

ねごと

2012年08月号掲載

 ねごと

Writer 沖 さやこ

今年4月にリリースされた前作シングル『sharp ♯』ではオリコンTOP10入りを果たし、メジャー・デビュー以降バンドの規模を着実に大きくしている4ピース・ガールズ・バンド、ねごと。早くも彼女たちから3曲入りの両A面シングル『Lightdentity / Re:myend!』が8月8日にリリースされる。「Lightdentity」はTVCMソング、「Re:myend!」は長編アニメーション映画「放課後ミッドナイターズ」の主題歌に起用され、バンド・シーンだけではなく、J-POPシーンへの活躍も期待される。

2010年9月に初音源となるミニ・アルバム『Hello!“Z”』をリリース。インディーズ、メジャー共に、個性溢れるバンドが活躍するガールズ・ロック・シーン。デビュー当時から彼女たちは、そのど真ん中にいるようで、まったく別次元にいるような、何とも捉えどころがない空気を纏う。それは極上のポップ・センスを作り上げる、芯の強いオルタナティヴな空気感だ。人を喰らうような勢いや、奇抜なセンスとは違う“鋭さ”が彼女たちの音楽にはある。分かり易いところで言えば、彼女たちの楽曲には恋愛の歌がほとんどと言って良いほどない。恋愛などの題材を通して、女であることを武器にするガールズ・バンドが多い今日のシーンにおいて、その中性的なスタイルは非常に新鮮だった。2011年にリリースされた1stシングル曲「カロン」はその代名詞とも言える。性別という概念なんて、きっと彼女たちは重きを置いていないのだろう。素直に鳴らされる純粋な音と感情は伸びやかに、かつ煌びやかに炸裂。芯があってキュートな蒼山幸子(Vo&Key)の澄んだヴォーカルが更にサウンドにスパイスを与える。昨年リリースされた1stフル・アルバム『ex Negoto』は、そんな彼女たちの等身大が詰まった快作と言って良いだろう。

そして今作『Lightdentity / Re:myend!』は、彼女たちの挑戦と捉えるのが正しいのでは、というのが個人的な解釈だ。言葉の通り一段上に進んだ前シングル曲「sharp ♯」。「Lightdentity」と「Re:myend!」は、そこから更にいろんな要素を溢れんばかりに詰め込んだ、パワフルな楽曲たちだ。打ち込みなどを多用したアレンジ、変拍子、メロディも楽器も所狭しとあっちにこっちに飛び回る。ゆえにその奔放さは、彼女たちの持つポップの要素を大きく引き出した。そしてどちらの曲にも強いメッセージ性が込められているのが特徴的だ。“どうしても先を見たいんだ”という歌い出しの「Lightdentity」は未来に向かって勇敢に攻める決意が感じられる。ちなみにリマインドと読む「Re:myend!」は、蒼山のブログによると、再びという意味を持つ“Re:”と、“my end”を組み合わせたもの。“亡くしてしまった心の中の亡霊のような情熱を取り戻して踊ろう”という意味が込められているとのことだ。共通点の多い「Lightdentity」と「Re:myend!」だが、エネルギーの根源が対極の位置にあるのも興味深い。そういう意味でもこの2曲は切っても切り離せない双子のようだ。Track.3に収録されている「彷徨」は、これまでのねごとが作り上げていたサウンドや空気感に近い。素朴な日常と心情をシンクロされて描かれる歌詞、ミディアム・テンポの中で凛として鳴らされる4人の音は全てが、一点に集中していくような緊張感を帯び、それは心の奥へ奥へと刺さってゆく。あてのない旅をしている、どこかへ行きたいのにどこへも行けない、彷徨っていることを否定も肯定もせずに、それを事実として受け止める。そういう強さが彼女たちの持つ鋭さのひとつでもあるのではないだろうか。

先月には在日ファンクとのツーマン・ライヴを行い、今夏は日本のフェスへの多数出演は勿論のこと、韓国にて開催されたJISAN VALLEY ROCK FESTIVALにも出演。8月31日には関東近郊某所にて、初のライヴ・チケット付きバス・ツアー“ねごとPresents お口ポカーン!! ~Shall Re:dance?真夏のミステリーツアー~”を開催する。サウンドのみならず新しい試みに挑戦する彼女たち。夢のようにファンタジックなねごとワールドはどこまで膨らんでいくのだろうか。この先も若き才能に注目だ。

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