Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

FEATURE

Overseas

NEON TREES

2011年07月号掲載

NEON TREES

Writer 沖 さやこ

まずこのアーティスト写真、思わず二度見してしまうほどのインパクト。本当に同じバンドを組んでるのか? と思うくらい4人のキャラクターはバラバラ。この写真だけではどんな音楽をやっているバンドなのか、なかなか見当がつかないだろう。アメリカの中西部に位置するユタ州出身の4人組ロック・バンドNEON TREES。今年のSUMMER SONICにも出演が決定し、本国アメリカでは昨年発表されたデビュー・アルバム『Habits』の日本盤がとうとうこの7月にリリースされる。

SUGARCULTのTim Pagnotta (Vo&Gt)がプロデュースした本作は、非常にポジティヴな空気が漲る、とにかくキャッチーなアルバムだ。ガレージ・テイストのあるギター・リフや、ニュー・ウェイヴの色を帯びながらも'80sの香りを彷彿させる清涼感のあるキーボードも心地良い。紅一点メンバーであるElaine Bradleyのドラムスは華やかに響き渡る。どの曲もエモーショナルでありながら、爽やかな鋭さを持つ。それは彼らの“音楽”に対する敬意の表れなのではないだろうか。様々な時代のロックの息吹を感じさせるサウンドは、彼らがロックを始めとする“音楽”を愛しているからに他ならないだろう。煌びやかでロマンティックで、何だか少し妖しげなジャケット・アートは彼らのサウンドを象徴するようでもある。

そして特筆すべきなのは、何と言ってもフロントマンTyler Glennのヴォーカルと、彼のなぞるメロディ。どの曲も“歌”がとにかく輝いているのだ。正直な心情が綴られた彼の歌詞を生かすべく生まれた高揚感のあるメロディは美しく、心の中に幸福感を呼び起こす。感情に密接にリンクしてくる人懐っこさも魅力的だ。そんなメロディと耳に密着するようなTylerのヴォーカルの相性が極上。少々癖のある(というのはヴィジュアル面でも証明済み?)粘着性の高い官能的な彼の歌声はダイナミック。シングル曲にもなった「Animal」を聴くだけでもそれは証明されるだろう。一度聴いたらサビのメロディは頭から離れないし、彼と共に「Oh, oh」と口ずさんでしまうほどだ。

そして、よく聴いてみると楽器隊の演奏に合わせて巧みに声量や歌い方を微調整している。繊細な職人気質な側面にも唸るばかりだ。力強さとしなやかさが同居する「Your Surrender」ではそれが顕著だろう。シンセの中に滲むギターとドラムとタイトなドラムが特徴的な、異世界に連れ出すようなドラマティックな展開を見せる「Girls And Boys In School」では虎視眈々と獲物を狙う動物のようなちょっと危険なムードが漂う。涼しげなElaineのコーラスも彼の歌にしっかりと優しく寄り添う。

と、長々と考察をしてみたが、とにかく彼らは生きること、人であること、音楽をやっていること、その全てを楽しんでいるだけなのではないだろうか。音のひとつひとつが非常に高いポテンシャルの生命力に溢れている。Tylerが歌っていることは、一貫して人の持つ情熱や愛。そして彼らはこのアルバムを『Habits』(=習慣、癖)と名付けた。その感情の矛先は音楽であったり、スポーツであったり、人間であったり、個人個人で違うだろうが、情熱を持つこと、愛することは、人間から切っては切れないものなのだ。全ての人間はそのために生きているのかもしれない。彼らが音楽を通して導き出した愛と情熱の生き様が、この『Habits』には込められている。

  • 1