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THE VACCINES

2011年05月号掲載

THE VACCINES

沖 さやこ


音楽が耳に入るとき、大半の人々は歌を最優先に拾う。そう考えると、音楽においてメロディとは、人間での身体で言う顔と等しい存在である。ならばTHE VACCINESの作るメロディはそれはもう半端じゃない甘いマスク、一目惚れ必至の美貌を持つイケメンと言っても過言ではないのではなかろうか。結成1年にも満たない彼らが今、世界を揺るがしている事実、これは音楽シーンにおいて大きな希望である。

Jay Jay Pistoletという名義で活動をしていたJustin Youngを中心に、2010年6月ロンドンにて結成。「よりプロフェッショナルに、よりクリエイティヴになる」というJustinの堅い決意のもと集まったFreddie Cowan(Gt)、Pete Robertson(Dr)、Arni Hjorvar(Ba)。FreddieはTHE HORRORSのベーシストであるTom Cowanの弟、ArniはBjorkの子息とバンドを組んでいたことがあるそうで、まさに4種4様の個性溢れるメンバーだ。

「THE VACCINESが出来たのは、多分4人ともすごく違う世界で過ごして、みんな違った音楽経験をしてきて、それぞれ自分の音楽に対する愛情や姿勢を一新したいと思っていたからだと思う」(Pete)

「4人みんなにとってタイミングが本当によかったんだよね、それぞれマンネリに飽き飽きして、新しいことを何かしたいと思って何か楽しいことを探してた」(Arny)

2010年夏に完成した最初のデモ・トラック「If You Wanna」は大きなターニング・ポイントだった。ウェブに上げられた同曲をBBCの著名DJ、Zane Loweが“世界で最もホットなトラック”と讃え番組で流したのだ。噂はたちまち広まり、その直後のUKツアーは続々とソールド・アウト。今年初頭に行われた北米ツアーでも、NYやLAなど数公演でソールド・アウトし、その勢いはUKに留まらず全世界にまで轟く。

そしてこの、1stにしてモンスターと言うべきアルバム『WHAT DID YOU EXPECT FROM THE VACCINES?』で、5月11日に待望の日本デビューを果たす。vaccineとは“ワクチン”の意(ちなみに英語読みだと“ヴァクシーン”)。「THE VACCINESに何を期待した?」という、そこはかとなく挑発的なアルバム・タイトル。麻痺しきったこの世の中を健全へと導く自信と覚悟なのだろうか? と意気込んでみたが、本人達はいたってフラットだ。

「音楽を作り続ける理由を探していて、また音楽が好きになれて、好きなことをやってるって思えることをしたかったんだ」(Freddie)

瑞々しくダイナミックなサウンドは、UKロックの歴史を全て継承したようなスケール感と振り幅を持つ。ドラムが炸裂した直後に美しいピアノで聴かせたかと思えば、ポップな音色を投下したりと、聴き手の心を常に揺さぶり続ける。そして、Justinの声がこのメロディを伝うと、極彩色とも言わんばかりの鮮やかさに溢れるのだ。彼らは特に稀有なことをしているわけではない。その潔さも、近年のロック・バンドには見られなかった独特のセンスなのではないだろうか。

「新しい時代が始まってもいいんじゃないかな。僕らはポップな曲を作るロック・バンド、そんな感じだと思う」(Freddie)

「ビッグになるっていうより、もっともっとうまくなりたいね。上達すれば、他のこともきっとついてくるっていうか、うまくいくんじゃないかな」(Justin)

地に足をつけ、自分達の信じる道を自分達の速度でしっかりと歩んでいくTHE VACCINES。彼らの築く新時代に、希望の光を感じずにはいられない。

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