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UNCHAIN 谷川正憲 改め、茉莉乃沢ガニ太【第9回】

2013年08月号掲載

UNCHAIN 谷川正憲 改め、茉莉乃沢ガニ太【第9回】

東京合衆国。それは渋々谷、新進宿、瀬汰我屋、墨澄み田、皆港、の5つの州から成る。それぞれに州を統治するクラウドノイドが存在する。比叡山ふもとは6人目の幻のクラウドノイドということになるらしい。「…というわけで、今この東京合衆国はクラウドノイド同士のナワバリ争いが起きているっつってんだバカヤロー!」汰異牙は東京の事情を話してくれた。「クラウドノイドたちはそれぞれ、普通の人間には到底ありえない恐ろしいアプリを天然でインストールしていると聞くっつって」千異汰はさらに言う。「例えば渋々谷を統治する、市間 瑠休(イチマ ルキュウ)のアプリは〝雷神〟。カミナリを自在に操ることができる唯一の存在なんだっつって」さっきから外を覆う黒い雲は瑠休の影響らしかった。「その瑠休さんの〝雷神〟の力が実はすごく弱まってきている。そろそろ他のナワバリの奴らにもバレてしまう頃だ。このままだと争いの均衡が崩れて東京は戦場になるだろうっつって」口調の割に深刻な千異汰。「比叡山と言ったな。お嬢ちゃんモノホンのクラウドノイドなら何かすごい能力があるんじゃねえのか?バカヤロー!」汰異牙の問いに僕は答える。「そういえば、ふもっちゃんあの時、自分のキズを治していたよな…」実家の倉庫の風景が蘇る。あの時はクソ親父が治していたものとばかり思っていたが。どうなのだろう。「それだよ!!そのアプリは恐らく〝回復〟、あるいは〝修復〟だバカヤロー!その力があれば瑠休さんの〝雷神〟も復活するかもしれねえ!バカヤロー!」汰異牙はションテンがガリアーだ。それからすぐに僕たちは渋々谷の中心〝ごちゃごちゃクロスロード〟の地下にいるという市間 瑠休のもとへ向かうこととなった。そこは道玄沼から徒歩ですぐのところだったが、地下への入り口を5、6人の赤い髪で赤い服を着たチンピラが塞いでいた。「あのナリ…。あいつらまさかっつって!!」千異汰はそう言うと〝韋駄天〟を発動。ひゅいんっ!赤いチンピラ達の周りを囲むようにぐるぐると高速でプレッシャーをかける。「うわっ!何だこいつら!?」赤いチンピラ達は千異汰一人を複数だと思っているようだった。「テメェラ!ドコノモンダ!?ツッテ」ひゅいんっ!千異汰は高速で移動しているため、声がエコーしている。赤チンは言った。「お、俺たちは新進宿の〝炎帝〟、高島 一世短(タカシマ イッセタン)さんの使いのもんだぁ!!も、燃やすよ!?」新進宿!?どうやら隣のナワバリから攻めてきたということらしいが、燃やすよ!?という威勢の割にビビっている様子である。ひゅいんっ!千異汰はすかさずそこを突く。「ヤッパリカッツッテ!!」言ったか否か、次の瞬間、赤チンは全員同時に宙を舞った、かと思ったらそのまま顔から地面に叩きつけられた。「秘技〝韋駄天メテオスマッシュ〟!っつって!」赤チン達はアスファルトの地面にめり込んでいる。千異汰すげえ。こええ。「お、ぅほや、ずぅ、、よぅ、、」赤チンは頑張って「燃やすよ」と言おうとしているようだ。どんなにピンチのときでも「燃やすよ」と言っておけば大丈夫だ!などと教え込まれてでもいるかのように、なんかすごい頑張っている。「おい!おめえら!ほっといて急げ!瑠休さんがあぶねえ!!」千異汰はそうゆうと再び〝韋駄天〟を発動させ、あっという間に地下へと降りていってしまった。僕、ふもと、汰異牙の3人も急いで千異汰の後を追う。進んでいくにつれ、どんどん気温が上昇していくのがわかった。噴き出す汗。前方に見える地下室の扉は真ん中がまるでマグマでも通ったかのように溶けている。僕は大きくなる鼓動を抑えきれずにいた。「千異汰ぁ!瑠休さぁん!バカヤロー!!」汰異牙が先に部屋に入ろうとしたそのとき。「うがああああああ!!!」千異汰の声だ。「千異汰ぁ!!千異汰ぁあああ!!バカヤロー!!」汰異牙の叫び声が響く地下室の中で僕とふもとが見たのは、赤い髪、赤い服、全身を赤色に染めた鬼のような形相の赤目の男、その奥のミイラ化した死体、手前の黒炭、そしてそれを抱えて叫ぶ汰異牙の姿であった。

…to be continued