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UNCHAIN 谷川正憲 改め、茉莉乃沢ガニ太【第8回】

2013年06月号掲載

UNCHAIN 谷川正憲 改め、茉莉乃沢ガニ太【第8回】

東京、渋々谷にある”道玄沼ライオン坂不動産”に案内された僕とふもっちゃんは、チキチキの江戸っ子兄弟の話を聞いていた。「てやんでぃ!つまりだなぁ、ここ東京では空気の汚染が酷くて、一時間以上外気に触れるともう二度とお天道様を拝めねえって寸法よ!バカヤロー!」兄の汰異牙だ。「違うよ兄ちゃん。せいぜいまだ肺の機能が一時的に異常をきたすって程度さ。つって」弟の千異汰がつっこむ。「てやんでぃ!要するに、この東京ではヒューマンクラウドの中でしか生活できない状況だっつってんだバカヤロー!」汰異牙は涙を流している。「いやキモいよ兄ちゃん。だからおいらたちは東京に初めてきたあんたらみたいなお客さんに、安全で優良なクラウドを紹介しているってわけさ。つって」ううむ。なんだかいまいち状況が飲み込めないが、僕らを騙そうとしているわけではないような、気がする。「あのー。先ほど弟さんが言っていた”剛力”とかなんとか、あれは一体何なんでしょうか?」僕は恐る恐る質問してみた。「なんでぃ!てめえら”ヒューマンアプリ”のことも知らねえのか?」ヒューマンアプリ?アプリてあのスマホとかで使うあれか?何言ってんだこいつ。「うるせえバカヤロー!そのアプリだよバカヤロー!」心を読まれた。「人間そのものにアプリをインストールさせ発動させることで色んな能力が使えるようになるんだよ。つって」千異汰は言う。「兄ちゃんの”剛力”は発動時、自分の10倍の力を瞬時に引き出すことができるのさ。つって」さらに言う。「ちなみにおいらは”韋駄天”をインストールしている。まあゆっくりお茶でもどうぞっつって」千異汰がつって。と言い終わった次の瞬間、僕とふもとの前にはお茶が出されていた。いつの間に? 何も、誰も動いていなかったように見えたのだが。「てやんでぃ!千異汰の野郎が高速で移動しただけのことだバカヤロー!」汰異牙は泣いている。この弟の方が? たった今目の前で話していたというのに。ヒューマンアプリとかいう非現実が本当に存在するのだろうか。てゆうか、まずこの二人が似過ぎていてどっちがどっちだかあんまりわかんない。ちなみにそっちのお嬢ちゃん。と千異汰は続ける「もうすでにクラウドアカウントを持っているみたいだねぇ。名前を教えてもらっていいかい?つって」「比叡山ふもと。だと言っている」何故か威圧的に答えるふもっちゃん。「ひ、え、い、ざ、ん、ふ、も、と、っとくらぁ!」千異汰はPCに名前を打ち込んでいるようだった。タイピングは初心者のようだ。「出ました! …おおおおお!! こ、これは!? クラウドノイド!? あ、あの伝説の!?」千異汰のテンションが急激に沸点を迎えた。「てやんでぃ! な、なんだって!? ほ、ほんものかよ!!? モノホンかよ!!?」汰異牙はさまぁ~ず三村よろしくのツッコミで沸点を迎えた。僕はここだ! と思い、一気に本題へと話を戻す。「そうなんです! 僕は彼女を人間に戻してあげたい! そのために東京にふがっ!」エルボーが入った。それも息の合った兄弟のツインエルボーだ。「おめえ本物のクラウドノイドけ?」「モノホンかよ!? モノホンなのかよ!?」もうどっちがどっちの江戸っ子だかわからんが、たぶん三村っぽいのが兄の汰異牙だろう。「おめえがモノホンなら、この東京合衆国を救えるかもしれねえぞバカヤロー!」ハモった。マナカナとかでよくある双子ならではの台詞ハモ。合い過ぎてて気持ちが悪いよね。いや、ちょっと待ってそんなことより、東京を救うって何だよ!? 合衆国って何よ!? 鼻血をふきながら振り返ると、外はいつのまにか真っ黒な雲が立ちこめていた。

…to be continued