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黒猫チェルシーの「開拓!ネコロンブス」【第6回】

2016年11月号掲載

黒猫チェルシーの「開拓!ネコロンブス」【第6回】

黒猫チェルシーの開拓!ネコロンブス 第6回 <澤竜次(Gt)>

今回開拓するテーマは、トタン。
始まった途端何を言っているんだ、とあまりピンと来ていない人も少なくないだろう。
トタンというのは人のアダ名でも無ければ牛の部位でもない。
トタンが時々街の外れに紛れ込む姿を目にすれば、それは渋く鈍く、そしてギラギラと風情と哀愁を撒き散らしながら、どこかその不安定さにゾクゾクさせられる存在である。

俺の好きな物は、ほぼ全て「哀愁」を感じるものである。
音楽や映画を始め、前回開拓したホッピー含むお酒、街、そして人。
今回のテーマであるトタンは街の分類であるが、その中でも無くてはならない存在なのである。
そう、これがトタンである。

このトタンは俺が街で出会った中では最も理想的である。
チグハグに貼られ、色も5色が絶妙な配分で成り立っている。
パイプも効いている。
色を塗られた加工具合と、チグハグさと錆による積年の劣化具合、それらを併せ持って街の片隅に窮屈そうに佇むその出で立ちは、何とも愛おしさを感じる。
そもそもトタンは、簡単な建造物の屋根や外壁の他に、バケツやちりとりにも用いられ、語源はポルトガル語の亜鉛(Tutanaga)に由来する。
一方でトタンが敢えて都会の中心に大々的に、お洒落として使用される場合も多く見られる。
代官山や表参道、自由が丘などのお洒落タウンにあるカフェやレストランなど。
それらはまた違った面持ちで、流行最先端の都会の街のド真ん中に活き活きと佇んでいる。
錆びているにもかかわらず。
しかし、そこに哀愁は無い。
養殖トタンも綺麗でお洒落で好きだが、野生トタンの、不安定でも必死で生き残ろうとする健気さに感じる哀愁は別格である。

しかし、ただ錆びているだけの茶色いトタンは味気なく魅力的ではないわけで、やはり錆び方も重要である。
例えばこの1枚、先ほどと同じ街の付近で撮影したものを。

これは何故か2階にドアがついており不思議な構造だったのだが、ドアの錆び具合が圧倒的な貫禄と威厳をもち、芸術性を放っている。
ずっと眺めていられる。

黙っておこうと思ったが正直に言うと、俺がトタンに魅力を感じ始めたキッカケはユニバーサル・スタジオ・ジャパンである。
そこら中にお洒落トタン。

しかしまあ、それ以来街の片隅に存在する野生の良いトタンを見つけてはワクワクさせられ、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを思い出して。
いや、そうではないし、そうかもしれない。

と言う事で、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは最高にワクワクさせられる場所である。
皆で遊びに行こう。